除去加工

 切削加工は機械金属加工の花形。旋盤やフライス盤、マシニングセンタ(MC)といった工作機械で金属や樹脂を自由な形に加工していきます。工学的には材料の不要な部分を取り除く「除去加工」の一つで、旋盤やNC旋盤など材料を回転させる加工と、フライス盤やMCなど刃物が回転する加工に大別されます。
 三陽機械製作所は伝統的な汎用旋盤から最新の5軸MCまで、切削加工に必要な多数の工作機械をそろえ、加工する部品の特徴に合わせて使い分けています。

切削加工の種類と機械

汎用旋盤

 回転する材料に刃物を押し当てて削る伝統的な加工方法です。陶芸作家が粘土をろくろの上で回転させ、手と指を当てて茶碗の形を作る作業を思い浮かべてください。外側を整えたり、内側を押し広げたり、最後は糸で台座から切り離したり。金属材料の旋盤加工も同じように、外径加工、内径加工(中ぐり加工)、突っ切り加工などを行います。

 金属材料の旋盤加工では、材料の硬さや大きさ(直径)に合わせて回転数、刃物の種類、刃物を動かす速度(送り速度)を選びます。工学的な法則はありますが組み合わせが無数にあるため、いかに切断面を美しく、しかも短時間で加工するかは、加工する人や会社が蓄積したノウハウによって差が出ます。

 汎用旋盤は、こういった設定と加工時の制御をすべて人間が手作業で行います。カメラに例えるなら、プロのカメラマンが昔使っていたマニュアルの一眼レフ。腕が良ければ一発で高精度の部品を作れるうえ、プログラムを組む必要がなくすぐに加工が始められるため、少数の試作などに向いています。

NC旋盤

 NCとは「Numerical Control=数値制御」の略で、コンピュータとプログラムによって工作機械の動作を制御することを指します。NC旋盤は、加工のプログラムを一度組んでしまえば、同じものをいくつでも作れるため産業機械の部品など中規模の量産加工に適しています。

 プログラム作業もコンピュータの質問に答えていく「対話式プログラミング」が進化しており、新人でも短期間でNC旋盤を操作できるようになってきました。三陽機械製作所でもNC旋盤が旋盤加工の主流で、リピート品の加工だけでなく比較的少量の部品加工にも活用し、高精度な部品を仕上げています。

NCフライス盤

 材料を固定し、回転する刃物を押し当てて削るのがフライス加工です。旋盤加工が基本的に丸い形を削り出すのに対し、フライス盤は平面を削り出すのが得意ですが刃物の動かし方によっては丸いものなどどんな形でも加工できます。刃物の動かし方がそのまま製品の形になるため、コンピュータで制御するNCフライス盤が主流で、完全に手作業の汎用フライス盤は最近では珍しくなっています。

複合加工機

 NC旋盤とNCフライス盤の機能を併せ持った工作機械です。例えば「基本的に円筒形だけれど、両端が四角くなっていて、何箇所か穴を開ける」といった部品を加工するのに適しています。構造的にはNC旋盤を基本として、もう一つフライス盤の加工ヘッドを追加した構成の機械が多いです。ただし機能の組み合わせはさまざまで、特定の部品を大量生産するのに最適化した「専用機」と呼ばれる工作機械もあります。

マシニングセンタ(MC)

 MCは切削加工の主流になりつつある機械で、NCフライス盤をベースに多数の刃物を自動交換する機能を備え、材料をどんな形にも自由に自動的に加工する工作機械です。例えばまず「正面フライス」という工具で広い平面を作り、さまざまな直径の「エンドミル」という工具で外径や中ぐり加工を行い、さらに「ドリル」で穴を開け、「タップ」でねじ穴を切る、という一連の加工を、一度材料を取り付ければ一つのプログラムで連続加工することが可能です。  MCの動作は、X軸・Y軸・Z軸の三方向の位置決めが基本ですが、これに材料を固定する台座が「回転する」、台座が「傾く」を合わせた同時5軸制御マシンが登場しています。

例えば風車の羽根のような複雑な3次元曲面は、XYZ軸を少しずつ動かしていたのでは膨大な時間がかかるか物理的に加工できないことも多いです。5軸MCは、刃物の位置を変えながら同時に台座に乗った材料も動かすことで、複雑な形状を短時間で高精度に加工することができます。

切削加工のメリットとデメリット

 切削加工には、塑性加工や射出成形といった他の加工方法と比べ、メリットとデメリットがあります。加工する部品の形状や精度、生産数量によって、最も適した加工方法を選ぶことが重要です。

精度の追求は切削加工が有利

 切削加工は一般に、100分の1mmを超える精密な単位で加工が可能です。折り曲げたり押しつぶしたりして形を変える「塑性加工」や、金型に溶けた樹脂や金属を吹き込む「射出成形」より高精度な加工に適しています。
 ただし、高精度な切削加工を行うためには、高度な計測技術も必要です。「いまどんな大きさで、あとどれだけ削る必要があるか」を正確に把握できなければ、高精度な仕上げはできないからです。また、じっくり時間をかけて切削加工すれば高精度に仕上がるのは当然ですが、工業製品の製造コストを考えれば、短時間で次々と高精度に切削する必要があります。そのためには、材料の固定方法や工具の選定などさまざまなノウハウが必要です。

切削加工は量産性を確保する工夫が必要

 一個ずつ丁寧に加工していく切削加工は、金型で次々と形を作っていく射出成形やプレス加工に比べると量産性が劣ります。コンシューマ向けの家電製品の部品など月数十万個単位で大量生産するなら、普通は切削加工ではなく金型による加工を選択します。

 しかし、金型の製作費は高価なため、各種の産業機器の部品のような月数千個までの中量生産では、切削加工で量産性を高める工夫をします。工作機械に材料を固定する「段取り替え」の作業を効率化するため、材料を固定する「治具」を工夫して複数の材料を一度に取り付けたり、機械が段取り替えする「パレットシステム」や「ローダー」を活用し、夜間の無人連続運転を可能にするといった対策が有効です。  三陽機械製作所には、大手産業機器メーカーの部品製作を70年続けてきた経験とノウハウ、設備力があります。治具を工夫したNC旋盤の同時稼働、パレットシステムを備えた5軸MCの24時間稼働など、製造する部品の特徴や数量に合わせ、最も適した切削加工の方法を提案しています。